葡萄畑のは平均斜度は38度。人々が首をかしげる山奥の葡萄畑は人にも葡萄にも適地だった
1950年代、当時の特殊学級の中学生たちとその担任教師によって開墾されたこころみ学園の葡萄畑。足利の北の山にあるこの葡萄畑は平均斜度38度の急斜面です。なぜこんな山の奥に葡萄畑を開墾したのかと思いますが、それは、一介の教師には、平らな土地に農地を得ることができず、山奥の急斜面を開墾するしかなかったからでした。
しかし、このこころみ学園の葡萄畑は、南西向きの急斜面であるため陽あたりがよく、水はけがよく、葡萄にとってなかなか良い条件です。また、この急斜面は葡萄の生育によいだけでなく、障害を持ってかわいそうと過保護にされ、あてにされることもなかった子どもたちにとっても、大切な役割を果たしてきました。
1950年代、少年たちによって開かれた山の葡萄畑は、開墾以来、除草剤が撒かれたことがありません。 1980年に誕生したこの山の麓のココ・ファーム・ワイナリーは、1984年からワインづくりをスタート。 2007年より100%日本の葡萄からワインをつくり、自家畑では化学肥料や除草剤は一切使わず、醸造場での醗酵も天然の野生酵母や野生乳酸菌が中心。“こんなワインになりたい”という葡萄の声に耳を澄ませ、その持ち味を生かすことを大切にしています。
品質を押し上げたのは現代における日本ワインの父ブルース・ガットラヴ
ココ・ファームのワインの品質を押し上げたのは現代における日本ワインの父ブルース・ガットラヴ です。
ニューヨーク生まれ育ちアメリカでもっとも権威のあるカリフォルニア大学デイヴィス校にて醸造を学び、カリフォルニア・ナパヴァレーの名だたるワイナリーにてコンサルタントを務めた醸造家。ココ・ファーム・ワイナリーから熱心な招致を受け、コンサルタントとして指導を行うため日本に移住。今では日本ワインのトップ生産者となった造り手の多くはブルースさんから何かしらワイン造りの示唆を受けています。また、日本ワインにおける、ピノノワールの可能性を切り拓いた人物であるドメーヌ・タカヒコの曽我貴彦さんは10年間ココファームで葡萄栽培を行い葡萄栽培責任者も務めました。
ブルースさんが醸造責任者に就任して以来、ココ・ファームのワインは飛躍的に進歩しました。それを決定づけるか出来事が起きました。2000年に行われた第26回主要国首脳会議九州・沖縄サミットの晩餐会にココ・ファームのワインが採用
されたのです。これは国際ソムリエ協会会長にも就任した日本を代表するソムリエ田崎真也さんが選んだものでした。今では国際線ファーストクラスに採用されるなど日本を代表するワイナリーへ成長しています。
フランス南西部マディランは年間雨量が多い場所にもかかわらず、タナ種の葡萄から色が濃く、果実味豊かで渋味の強い長期熟成タイプのワインが造られています。ココファームはこのタナ種の葡萄を最初に足利に植え、その後山形と長野の契約農家方にも栽培を快く引き受けていただきました。土地との相性もさることながら、彼らの経験と技術によってわずか数年のうちに素晴らしいタナ種の葡萄が収穫できるようになりました。
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